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Myasthenia Gravis
一般社団法人   全国筋無力症友の会 大阪支部  

重症筋無力症についてabout

   
治療方法
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《治療方法の概要》
 治療の方法には内科的治療と外科的治療があります。重症筋無力症の一般的な治療の順序は次のようにするのが良いと考えられています。

抗コリンエステラーゼ剤による内科的治療法
胸腺摘出術による外科的治療法
ステロイド
免疫抑制剤
血液浄化療法・免疫グロブリン大量療法など緊急事態時の特殊な方法
漢方薬
 胸腺摘出の時期は発病してから長くたつと、効果がうすくなるとされています。ですから胸腺摘出術を原則として先行させる必要があります。

《抗コリンエステラーゼ剤による内科的治療法》
 診断がついたら、まず第一に使われる薬です。
 「メスチノン」「マイテラーゼ」「ウブレチド」などの錠剤があります。日常生活に困る時に薬をのめば筋力が戻り、個人差はありますが、ある程度は普通に生活できるようになります。
 しかしこれは対症療法であって、病気の原因を治す薬ではありません。

-抗コリンエステラーゼ剤の副作用について-
 重症筋無力症の対症的な治療薬である抗コリンエステラーゼ(メスチノン、マイテラーゼなど)の副作用としては、腹痛、下痢、吐き気、嘔吐、発汗、よだれ、流涙などがあります。「硫酸アトロピン」という薬がこの副作用を抑えるために使われます。
 また飲み過ぎた場合には、筋肉がピクピクしたり、(コリン作動性の)クリーゼを起こすことがあるので注意が必要です。
 「抗コリンエステラーゼの大量(たとえば6錠以上)の長期間使用により、薬の効果が弱くなってきたりすることもあります。アセチルコリン受容体が変性するという報告もありますので、この様な場合は主治医の先生とよく相談のうえ薬の工夫をしてもらう必要もあります。」

《胸腺摘出術(外科的治療)》
・胸腺と重症筋無力症の関係
 1930年頃に外国で、重症筋無力症に胸腺腫が合併した患者の胸腺を手術して取り除いたところ、重症筋無力症が良くなったということから、胸腺腫がなくても胸腺を手術して取れば、重症筋無力症が良くなるのではないかと考えられて胸腺摘出術が始まりました。これ以後胸腺の働きが研究されて、胸腺と重症筋無力症との関係が次第に明らかになってきています。

・拡大胸腺摘出術
 日本では1980年頃から拡大胸腺摘出術が世界に先駆けて開始され、治療効果をあげてきました。これは医師の名により「正岡方式」とも言われています。
 以前の方法では胸腺の本体だけを摘出し、まわりの脂肪組織は残していました。正岡方式では、胸腺の脂肪組織にも胸腺細胞があることに着目し、広く胸腺を摘出します。その結果、以前より良くなる人の割合が増えてきました。

・経内視鏡拡大胸腺摘出術
 拡大胸腺摘出術は、胸の真ん中にある胸骨という骨を縦に切って、行われてきました(胸骨正中切開)。最近では、内視鏡による拡大胸腺摘出術も一部の施設を中心に行われるようになってきています。
 傷口が小さいので術後の回復が早いというメリットがありますが、胸骨正中切開に比べて視野が狭いので外科医の十分なトレーニングが必要であったり、大出血のときには対応できないので胸骨正中切開に切り替える必要があるといったことがあります。
(詳しくは城戸先生、塩野先生、門田先生などの講演をご覧ください)

・拡大胸腺摘出術の適応と効果
 「手術の適応は、15歳以上、全身型重症筋無力症が対象となる。また手術の効果は術後数か月間の不安定期を経てから半年から数年以内に『潮の流れが変わるように』徐々に快方に向かうことが多い。」
 胸腺腫がない場合のほうが、術後の改善率が良いといわれています。(『現代難病事典』P7)
 胸腺の摘出は、重症筋無力症の基本的な治療とされています。しかし、
10歳以下あるいは70歳以上
抗MuSK抗体陽性
眼筋型
合併症がある場合
などは慎重な選択が必要とされています。
 しかし眼筋型でも有効という研究もあり、今後、治療の対象が広がることと思われます。

・胸腺腫がある場合
 胸腺腫がある場合は、症状にかかわらず、なるべく早く拡大胸腺摘出術を受けることが勧められています。ほっておくと、だんだん大きくなり内視鏡手術が無理になったり、大動脈や心臓を包む膜に癒着してしまったりして手術が大変になります。胸腺腫例では早急な摘出を行っても、重症筋無力症の症状の改善は必ずしもよくない場合もあり、胸腺摘出後一時的に症状の増悪を来すことがあります。この際は、強力なステロイド療法等がさらに必要となります。

・胸腺摘出の問題点について
 胸腺は成人頃には脂肪組織に変わって、働きはなくなると考えられています。胸腺をとってしまっても、風邪をひきやすくなるとか、癌が発生しやすいとか免疫機能が低下することはありません

《ステロイドによる対症・免疫抑制療法(内科的治療方法)》
 ステロイドは炎症を抑える作用があり、かゆみからガンに至るまで数多くの難病の治療に用いられています。よく効く薬だけに強い副作用もあり、注意しながら使われます。
 ステロイドは、胸腺摘出後においてもなお全身型で抗コリンエステラーゼ剤の効果が不充分な重症例に使われます。また、胸腺摘出前からも使われる例もあるようですが、これはよほど重症の場合に限定されています。その他、眼筋型でも日常生活に強い障害がある場合は有効性があります。

・漸増・漸減療法
 (商品名「プレドニン」「プレドニゾロン」などがある)1日に1錠5mgから12錠60mgくらいまで徐々に増やす漸増療法と、反対に60mgくらいから徐々に減らす漸減の方法があります。この時、1日置きに(隔日)に服用すると副作用を少なくすることができます。
 最近では、もっと少ない量でも同じ効果を得ることができることがわかってきたので、少ない量で治療します。1日に2、3錠(10mgから15mg)で、1日置きでも2、3か月で効果が現れます。
 この治療でやっかいなことは、薬を減らしたり、やめたりすると症状が悪くなることがあるので、薬から離脱することが難しいことです。

-ステロイドの副作用について-
 ステロイド系の薬の副作用としては、軽い場合、満月様顔貌、体重増加、にきび、不眠等が現れますが、薬を止めるほどではありません。さらに眼症状として緑内障、白内障。消化器系では、胃潰瘍、脂肪肝、すい炎、代謝系では、糖尿病、高脂血症。中枢神経系ではうつ病などが認められることがあります。また骨粗鬆症や免疫力の低下を来すこともあり、これらの症状が出現した場合、薬の減量や中止をしなければならないことがあります。

・パルス療法(ステロイドの大量療法)
 商品名ソルメドロールなどを500mg か1000mgを静脈に点滴で入れる療法です。2日か3日、あるいは5日間続けてから、1週間か10日休んで、また行います。それを1か月に2、3回繰り返します。
 これは漸増・漸減大量療法の副作用を少なくし、またステロイドの離脱困難を避ける目的で行われています。
 パルス療法の際には(内服でも急にステロイドを大量に使用した場合には)一時的に筋力低下が現れることがあります(初期増悪とよびます)ので、入院で行われることが普通です。

《免疫抑制剤の併用療法》
 プログラフ(タクロリムス)、ネオーラル(シクロスポリン)が保険で認められています。これらは胸腺摘出、ステロイドなどの治療をしてもあまり効果がない、あるいは症状を抑えるのにたくさんのステロイドが必要でなかなか減らせないといった場合に、使われます。
 なお、プログラフについては、胸腺摘出やステロイド併用していなくても使用が保険で認められています。
 これら二つの薬はステロイドと違い、血液中の薬の濃度を定期的に測定し、十分な量がからだの中に入っているか、逆に入りすぎていないかということをチェックします。グレープフルーツジュース、サプリメント、コレステロールを下げる薬、血圧を下げる薬の一部などは血中濃度が変化するので注意が必要です。
 その他にイムラン(アザチオプリン)、エンドキサンなども使われることがあります。

-免疫抑制剤の副作用-
 免疫抑制作用に伴う、感染症などに十分な注意が必要です。
 そのほかに、ネオーラルでは、腎機能障害、高血圧、高脂血症などが多く、さらに女性の場合体毛が濃くなるということがあります(頭の薄い男性ではよろこばれるかもしれませんが)。プログラフでは糖尿病の危険性が高い、下痢などの副作用があります。
 血液中の薬の濃度が必要以上に上がっていないかチェックすることが過度な副作用の防止に重要です。
いずれにしても現時点の主治医と相談のうえ、薬を的確に内服することが大切です。

《血液浄化療法・免疫グロブリン大量療法などなど緊急事態時の特殊な方法》
 抗コリンエステラーゼ剤を使い、胸腺摘出術を行い、ステロイド剤や免疫抑制剤を使った治療をしても、症状が良くならない重症な場合(特にクリーゼの場合など)に、単純血漿交換法や抗体の除去を目的とする特殊な二重膜血漿ろ過法・免疫吸着法などの血液浄化療法が行われます。太い血管に入れた管(カテーテル)から血液を引き、機械に通して抗体の含まれる部分を取り除き、残った成分をまたからだに戻すことを行います。
 血液中の抗体を取り除いても、体は新しい抗体を作りますから、効果はすぐになくなります。これは根本的な治療法ではなく、重症な場合の緊急事態をのりきるための特殊な方法です。
 免疫グロブリン大量療法とは、正常な人の血液から取り出したガンマグロブリンを大量に点滴する治療法です。最近保険で認められるようになりました。血液浄化療法と同じように、緊急時に行われ、効果は一時的です。

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《漢方薬》
 漢方薬は、局所的な直接作用は少なく、全身状態を整えたり、西洋薬の副作用の軽減や効果増強の作用があります。ただしその処方は患者さんにより異なりますので、必ず漢方専門医の診察を受けてください。また、その際は内服中の西洋薬も医師に伝えて下さい。重症筋無力症に対して特定の漢方薬があるわけではありません。
 漢方薬は健康保険が認められるようになってきています。また、数は非常に少ないのですが、「東洋医学科」が設置された病院もあります。「東洋医学研究所」も日本に数か所あります。
 重症筋無力症に特定の漢方薬があるわけではありませんが、下痢、軟便;になり易い方には五積散が一番幅広く一般的です。東洋医学科で診療している医師によると「プレドニンやマイテラーゼを減量することができた。抗体値が下がったり、症状が改善した」という報告もあります。

 重症筋無力症の患者に有効とされている漢方薬は以下の通りです。
葛根湯(風邪薬で、首や肩がこる時に使われる)
小青龍湯(風邪薬。痰、鼻水が多い時に使われる)
半夏厚朴湯(喉の詰まり、喘息で苦しい時に使われる)
補中益気湯(元気をつける薬。手術後や放射線治療後に)
五積散(葛根湯・小青龍湯・半夏厚朴湯等を合せたもの)
その他、にんじん・黄耆・補気薬の入った方剤・柴胡・釣藤・芍薬・陳皮・厚朴などがあります。(元兵庫県立尼崎病院東洋医学科 松本先生の講演より)


 目次

症状

原因

診断方法

症状

合併症